花咲く原石
おずおずと一歩を踏み出し、シイラはリトの手を取って2人は階段をゆっくりと下りていった。

「うわ…。」

上から見下ろすのと感じる熱気が違う。

中央にくべた炎の熱もそうだが、人の熱も違っていた。

「ほい、リトの酒。」

「ああ、ありがとう。あ、それも頂戴?」

さっき下から呼んでいた人物から酒を受け取り、さらにその辺で飲み食いしている仲間たちから少しずつ物を貰っていった。

適当に食事を手に入れたリトは改めてシイラに向き合って空いているスペースに誘導する。

火を囲む輪から少し離れた場所に2人は腰を下ろした。

「シイラは酒は駄目だろ?」

そう言って渡されたジュースを受け取りお礼を呟く。

確かに旅の途中のシイラに酒は禁物だ。

明日もどれくらい歩くかは分からないが精も根も尽きるまで進み続けることは間違いない。

「こうやってなるべく灯りを落として月の光を浴びる祭りなんだ。」

リトの指す方に目をやると、ランプの灯りを落としていく人が何人か見えた。



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