花咲く原石
最小限のランプと焚き火、そして月明かりに包まれる景色はまた違う雰囲気を感じさせる。

「そういえばダイドンもよく月明かりの下で身体を伸ばしてた。」

わりと頻繁にしていたから満月だったかどうかは忘れたが、太陽よりも月の方が落ち着くと言っていた気がする。

「ダイドン?」

「お父さんなの。もう死んじゃったんだけどね。」

まだ少しだけ震える心でなんとか笑顔を作ることができた。

リトの顔が少し曇ったのが分かる。

シイラは何でもないと示すように月を見上げた。

「月の光を浴びるって、これはどういうお祭りなの?」

「うーん、エネルギーを貰う感じかな。昔から月の光には力があるって言われてる。」

リトは酒瓶を持っていない手を空にかざした。

「こうやって月から力を貰って夜に感謝するんだ。安らぎと癒しをくれる夜に感謝を込めて夜を楽しむ。」

「夜を楽しむ?」

シイラは思わず回りを見渡してみた。

月を見上げるというよりはただ酒を飲むことを楽しんでいるように見える。



< 117 / 200 >

この作品をシェア

pagetop