花咲く原石
大切にしているのだろう、愛しむような優しい表情で彼らを見つめていた。

「仲がいいんだね。」

「まあな。それに今までこのアジトを造り守ってきた人たちだ。尊敬もしてる。」

広間で向かい合ったときと同じ、少し威厳を見せるような雰囲気でリトは呟いた。

「彼らの思いを引き継いでいくことは…光栄だけど、正直緊張するよ。」

このアジトを治めるということは、そこに属する全員を守るということ。

上に立って初めて分かることや初めて見える景色に戸惑ったことも少なくはなかった。

「楽じゃなかったけど、誠意を見せたらそれに返してくれた。だから俺も更にって頑張っちまうんだ。」

彼の言葉はシイラに強く響く。

「それは…繋いでいくってこと、だよね。」

寂しそうに、目を潤ませながら呟いた。

「そうだな。過去から未来へ、繋いでいくってことだな。」

そう答えてリトは驚いた。

シイラの様子がさっきまでとは違い、沈んでいるように見える。

急に明るさを閉じ込めたシイラに、何か失言でもしてしまったのではないかと不安になった。



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