花咲く原石
「私、ドワーフの技術も父の思いも全て受け継いできた。東にある最高の炉を使って、最高の装飾品を作る。その為に私たちは東に向かってるの。」

「そうだな。」

シイラの言葉にリトはただ相槌を打ち、頷いた。

広間で向かい合った時もそう言っていた覚えがある。

いかにもドワーフらしいと、素直に感心したものだ。

しかし今はさっきと違う雰囲気でその言葉を受け止めた。

宴のざわめきも今の2人には遠い存在になっている。

「ドワーフはその命の終わりを知ったとき、自分の欠片である石を生み出す。輝きは素晴らしいものだけど、命が尽きて4回月が昇ればその輝きを失ってしまう。」

シイラの手は左胸ポケットにあてられ、大事そうに何かを守るようにそこから離れない。

きっとそこに石があるのだと、リトは頭の中でぼんやり思った。

「オーハルがピリピリしているのも時間がないから。ごめんね、嫌な思いさせちゃって。オーハルはダイドンの…父のたった一人の弟子なんだ。だから思いも強いんだと思う。」

「分かってるさ。シイラは気にしなくていい。」

きっとさっきの大広間でのリトとのやりとりを気にしていたんだろう。



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