花咲く原石
気に病む事はないと伝えるようにリトは優しい表情で首を横に振った。

それでもきっとシイラの気持ちは晴れていない。

本当は自分たちの為にあんな態度をとらせてしまった。

その申し訳ない思いがオーハルと、彼の敵視の対象になったリトたちにあるのだろう。

俯いているシイラの姿は弱々しくも見えた。

「オーハルはそれだけ守りたいという思いが強いんだろ?その気持ちなら分かる。」

リトが慰めてくれている、それさえも申し訳なくてシイラは目を伏せたままだった。

「この場所を守る為なら俺もがむしゃらになるからな。」

その言葉でシイラは顔を上げた。

「何かを守る為に必死になるのは当たり前だ。思いが強ければ尚更。」

「でも…。」

「シイラはオーハルの気持ちを否定しちゃ駄目だぞ。」

優しくも強い力を持つ声にシイラは圧倒された。

「会ったばっかの俺にも分かるくらい2人の間には確かな絆がある。信頼を寄せて一緒に旅をしているなら疑いや不安はいらない荷物だ。」

リトの言葉に旅立つ前のことが思い出される。


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