花咲く原石
3章 東へ
01.出会いに感謝して
夜が朝に変わる前、シイラとオーハルは静かに旅立った。
誰にも告げず、荷物を手にして出ていく姿を見張りの者が確認したのが最後だった。
「そうか、行ったか。」
見張りからすぐに出発したという報告を受けたリトは、寝所から出て客人の居なくなった部屋に足を運んだ。
昨夜の宴の後があってか、そこら中で酔い潰れている人がいる。
幸せそうに眠る仲間たちの姿に呆れながらも愛しそうに微笑んだ。
「毛布でもかけといてやって。」
「要らないでしょう。」
リトの言葉に素早くキアヌの棘が刺さる。
風邪などひこうものなら自業自得だと、彼女は完全に呆れていた。
「厳しいな、キアヌ。」
「どうせすぐに出発でしょうから。まあ、使い物になるか分かりませんが。」
「やっぱ厳しいわ。」
キアヌのため息混じりの言葉にリトは楽しそうに笑う。
客室に使われた部屋の前には何人かが既に待機していた。