花咲く原石
後方で足早に移動する人の気配を感じる。

早朝に相応しくない物々しい雰囲気が漂い始めた。

誰も居ない部屋を見つめるリトの姿は凛々しい。

何かを決意した、そんな姿だった。

「リト。」

「本部への連絡、大至急で飛ばしてくれ。」

「はい。」

リトの指示を受けてキアヌも部屋を後にした。

目を閉じて、昨夜のシイラとオーハルの姿を思い浮かべる。

澄んだ瞳、固い意思を持った瞳。

印象的な2人の目を思い出してリトはゆっくり目を開いた。

彼の目にも力が宿る。

シイラの手紙を懐にあるポケットに忍び込ませ、リトはまだ明けきらない夜の中を歩き始めた。



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