花咲く原石
声を張ったシイラに促されて振り返る。

オーハルの視線をシイラは逃がさなかった。

少し遠い位置から強い眼差しがオーハルを捕らえて離さない。

「シイラ、足を止めないでください。」

今までの言葉を全て流すように扱う姿は、不都合な事から逃げるように見えた。

いや、実際にオーハルは真っすぐなシイラから逃げた。

「オーハル。」

そんな彼の名前を呼ぶ事で道を正す。

シイラは避ける事を許さなかった。

強い、強い眼差し。

視線だけの闘いを挑んでくるシイラに逃げ道を失ったオーハルは降参の意味を込めたため息を吐いた。

「…分かりました。とにかく足を止めないで下さい。前に進む事を条件に話します。」

後半、オーハルの目は決して逃げようとはしていなかった。

その目を信じて、何も言わずにシイラは再び歩き始める。

「そもそも…私達の本当の行き先は東ではなく、中央区でした。」

「中央区?」



< 138 / 200 >

この作品をシェア

pagetop