花咲く原石
確かに手を引かれたままでは歩きにくいだろう。

加えて立て続けに告げられた困惑するような話に心身はバラバラになっている筈だ。

分かっていてもオーハルは気付かないフリをした。

立ち止まって彼女の不安を解消してあげるのが一番だと分かっている。

でもその時間はない。

目の前に見えるゴールに気が競っているのだ。

早く、速く、あともう少し。

気持ちが前に出すぎて自然と歩幅も大きくなり速度も上がる。

「オーハル…っ!」

後ろで小さく叫ぶシイラの声が聞こえる。

「ちょっと…待って…っ!」

聞こえているけど聞いていない。

オーハルの目にはもう門の入口しか見えていなかった。

あそこに行けば全てが終わり、解決し、また始まることも知っているからだ。

だから焦るような気持ちで前へ進んでいく。

しかしそれを少しも口にしていないオーハルの気持ちなんてシイラに伝わる訳がなかった。



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