花咲く原石
「オーハ…っ。」

背後から聞こえてくる声が弱々しくても今のオーハルに気遣う余裕はない。

このまま無理をしてでもシイラをあそこへ連れていく。

それしか考えていなかったのだ。

しかし。

「きゃっ!」

足を捕られシイラは転んでしまった。

オーハルはすぐに立ち止まって彼女の傍に屈む。

肩を上げて息をしながら小さく痛みを訴えていた。

「…あっ!」

うつ伏せに倒れた状態で胸ポケットの石を確認する。

手には確かに石の存在感があった。

安堵のため息をついてゆっくりと身体を起こしていくが、足はまだまだ調子を戻していないようだ。

シイラは歩くことさえも不安定になってしまった。

もうこの足場の悪い道を行くのは無理だろう。

それが分かった瞬間、オーハルは覚悟を決めた。

「シイラ、私達が向かう先を見て下さい。緑色の旗が見えますか?」



< 149 / 200 >

この作品をシェア

pagetop