花咲く原石
4章 居場所
01.過去
緑の旗までは僅かな距離。
あれから、何年の月日が経ったのだろう。
思い出すだけでも拳に力が入る。
オーハルがダイドン親子の監視役として任命されたのはもう何年も前の話だった。
公爵家へと配属された矢先の出来事だ。
近衛団に入隊して研修や短期出向もそれなりに経験していた。
勿論、正規配属だってある。
新入り指導を任される、いわゆる、中堅に位置するようになってきた頃だった。
色々な場所へ回っていると頼んでもいないのに耳に入ってくる情報もかなり増えてきたのだ。
兵士同士の噂話からお偉い貴族殿の浮いた話。
中にはかなり突っ込んだ洒落にならない話まで。
だからに違いない。
オーハルは配属先を命じられた瞬間、心の中で盛大なため息をついた。
いい話など1つも聞かない、それは闇に包まれた公爵殿の領地だと告げられたからだ。