花咲く原石
03.東へ
「シイラ、足下に気を付けてください。」
「うん、分かった。」
オーハルの注意を受けて、木の幹に触れながら慎重に足を運んでいく。
時間はかなり過ぎたようだ。
陽は昇り深い森にも暖かな光が差し込んでくるようになってきた。
あれから、ずっと歩き続けている2人とって時間の感覚はあまりないが、夜が明けた事だけは認識している。
次はきっと日が暮れるまで気が付かないだろう。
「わっ!」
「シイラ!?」
滑る音と同時にシイラの悲鳴が森に響いた。
前を進んでいたオーハルが緊張の面持ちで様子を窺う。
驚きのあまり速まる鼓動を感じながらシイラはとりあえず身体だけ起こした。
「大丈夫…ちょっと足を滑らせただけ。」
あると思っていた場所に足場がなかったり、石や草を踏んでバランスを崩すなんてことはよくある。
慎重に進んでいてもうまく歩けていない、あまりの道の険しさに常に気を張っていないといけなかった。