花咲く原石
どうやら、うやむやに誤魔化すつもりはないらしい。

確実に聞ける、そう思った時すがるようなか細い声が聞こえてきた。

2人のやりとりを放心状態になりかけながらもシイラはずっと見ていたのだ。

「オーハル…。」

彼女の声に反応したオーハルと目が合う。

それだけでシイラは泣きそうになった。

目の前にあるオーハルの痛々しい姿、一気に明らかにされた事実の重さに胸が苦しくなる。

しかしどこまで理解し受け止められているかと言われたら疑問だった。

まだ何もかもに対して時間が足りない。

それはオーハルにも十分に伝わっていた。

「シイラ。」

何も言わなくていい、その思いを込めてオーハルは首を横に振った。

思えば朝起きて出発してからシイラの気持ちが落ち着いた時は無かっただろう。

きっと今だってそうに違いない。



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