花咲く原石
目的地が変わったことも、自分の立場も、矢継ぎ早に聞かされて頭を抱えそうなくらい困惑している筈だ。

でも自分の口から告げる前に知られてしまった今、何から話せばいいのだろう。

泣きそうな顔のシイラを見てオーハルは微笑んだ。

「…私はドワーフの技術に惚れ込んでしまったんです。」

照れ臭そうに笑う姿は優しくて、シイラの涙を更に誘った。

それ以上オーハルは何も告げようとはしない。

シイラも聞こうとはしなかった。

とりあえず今はこれでいい。

不思議と満たされた気分になったのだから。


「シイラ。」

名を呼ばれシイラがリトの方に目を向けると、見覚えのある大きな荷物を差し出された。

それはいつの間にか無くしていたダイドンの工具が入った袋。

思えばオーハルもシイラも背負っている荷物以外手にしていなかった。

きっとそれどころじゃない状況で置き去りにしてしまったのだ。



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