花咲く原石
オーハルの視線の先にはリトがいて、完全に安心しきった顔で力を無くしている。

小さく呟いた後、オーハルの目は潤いを帯び始めた。

「いや、そうでもないよ。」

残念ながらね、そう付け足してリトは吐き捨てるようにオーハルの気持ちを突き放した。

その言葉にオーハルの表情も引き締まり、シイラの意識も振り向かせる。

「昨日の貴方の態度ではこうはならなかった。全ては彼女のもたらした幸運ですよ。」

そう言ってシイラにウインクをして見せる。

「おもしろいよな、シイラ。不思議な縁だと思わないか?」

「えっ?」

リトの言葉の意味が分からず疑問符をなげた。

「シイラが俺達を信じて、繋がりを求めたから今ここに俺達がいる。シイラが道を切り開いたんだ。」

「…私が?」

リトは懐から四つ折りにされた紙を取り出して笑った。

それはシイラがリトに宛てた手紙。

「俺たちは誰にでも優しい訳じゃない。シイラを助けたいと思ったからここに来たんだ。」



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