花咲く原石
彼は兵士で、捕虜である自分たち親子をずっと監視してきた。

しかしシイラの中にあるオーハルはその事実とは思えない行動ばかりをしている。

「文字の読み書きを教えてくれたよね。町にも連れて行ってくれた…色んな事を教えてくれた。」

ダイドンからはドワーフの技術や生活を学び、それ以外のことはオーハルから教わったと言っても過言ではない。

本だって与えてくれた、王国の話だって貴族の存在だって知っているのはオーハルのおかげだ。

「でも貴女に教えていないこともあります。」

シイラはオーハルの目を見ることで続きを促した。

「この白い壁の向こう、中央区の存在です。」

その言葉を受けてシイラはリトの方を見た。

中央区に所属しているリト。

そういえば確かに今まで読んできた書物の中にも中央区の存在などどこにも記されていなかった。

「あえて、だな。中央区の存在は知っていても本当の姿を知る者は少ない。存在さえもそんなに知らされていないんじゃないか?」

リトの言葉にシイラは首を傾げた。



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