花咲く原石
それはシイラも同じことだった。


ダイドンの為に。


前を向かせる気持ちは疲れを忘れさせ、力をみなぎらせる。

やっぱりまだダイドンを思い出すと胸が張り裂けそうだった。

もう悲しまないとさっき家を後にした時に誓ったはずだ、そう自分に言い聞かせてただ悲しみに耐える。

目が熱くなり涙が出そうになるのを何とか瞬きで我慢した。

「東にある最高の炉で最高の物を作る。それが私たちの願いだもんね。」

ダイドンの遺言でもありシイラの大切な未来の道標でもある。

だからだろう今の言葉はとても丁寧に綴られた。

父の形見で造り上げる装飾、それがドワーフだというのならシイラは必ずやり遂げなければいけないのだ。

ダイドンの血も、技術も、思いも全て受け継いでいくと決めたのだから。

「私が繋ぐ。」

ダイドンがいない初めての夜はあまりに辛いけど、それが試練だと、乗り越えるしかない。

そっと目を閉じて、ダイドンが還っているだろう空気と樹に身体を預けた。

眠ろう。

明日も早いのだ。

少しの微睡みを感じたあと、今日1日の疲れを落とすようにシイラは深い眠りに落ちた。



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