花咲く原石
「大丈夫。行こう。」

既に荷物を担いでいる彼に続くようにシイラも立ち上がった。

「辛かったら言ってくださいね。」

「うん、ありがとう。」

オーハルの優しい言葉と微笑みに頷いて歩き始める。

そしてまたすぐに二人の間に沈黙が生まれた。

響くのは草や葉を掻き分ける音と落ちた枝を踏む音だけ。

それさえも耳を通り抜けていく位に歩くことに集中して、というよりも無心になっていた。

ほとんどどの経路をどんな風に通ってきたかの記憶はない。

気付いたら今の場所を進んでいたりするのだ。

それが集中からか放心状態からかは分からないが、足は動き続けていたことは分かる。

その瞬間に我に返るのだ。

「はぁ…。」

突然漏れるため息。

ただ黙々と歩き続けていると無心状態から一変、よく分からないが急にシイラの思考が活発に働き始めた。

目に映る景色全てが情報源となり、色々な事が瞬時に浮かんでは消えていくことの繰り返しだ。

連想もあれば妄想もある、でも一番強く残るのは記憶の断片。



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