花咲く原石
02.ドワーフの墓
まだ誰も目が覚めない静かな夜明け前、深い深い森の中に1人の少女が立っていた。
灯りも持たずに佇む姿はどこか寂しそうにも見える。
明るい栗色の髪は後ろで丸く1つにまとめられ、耳には深紅の石がついた見事な装飾が施されているピアスが存在を主張していた。
彼女は大切な物に触れるように優しくピアスに手をあてる。
まだ星の瞬きが見える空の下、彼女は森の中には珍しい少し開けた場所に夜空からの光を浴びて立っていた。
淡すぎる光かもしれない。
しかし暗闇に慣れた目にはそれだけでも十分だった。
いま見ていたいものさえ見えていたらそれでいい。
愁いを帯びた彼女の緑色の瞳には不自然な景色が映っていた。
そこにはおおよそ彼女の腰の辺りまで盛られた土がある。
今はただ、その景色を目に焼き付けていたかった。
「ダイドン…。」
目の前の景色を見てぽつりと呟く。