花咲く原石
まるで手袋のようなダイドンの大きな手は黒く汚れて傷だらけでまさに職人の手と呼べる使いこみが見えた。

お互いの手を合わせてシイラの手は小さいなと笑っていたのを思い出す。

装飾や手伝いが上手くいった時にはその手でよく頭を撫でて褒めてくれた。

それが凄く温かくて嬉しかったのだ。

ダイドン。

ダイドン、ただ1人の家族。

思い出すと胸が熱くなる。

「駄目だ、疲れてる。」

疲労は心を弱くして、その隙間をつくように幸せだった記憶が現れて乱していく。

不思議なもので、それでも身体は動くのだ。

お昼ご飯を食べようと少し休憩した以来、ゆっくりと腰を下ろしていない。

あれからどれくらい経ったかは相変わらず分からないが、もういくつもの斜面を登っては下りていた。

時折オーハルが手元を確認している様子が後ろからでも分かる。

自分たちの標であるコンパスを見ているのだ。

確か石にも磁場があって、ダイドンがよくコンパスでそれを見せてくれた。



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