花咲く原石
ダイドンの貴石、シイラの歩いていく意味がこの胸ポケットの中にある。

身体にあたる風が心地よくて自然と目を閉じた。

「繋ぐ。私が繋いでいく。」

深呼吸と共にゆっくりと目を開けて落ちかけていた速度を取り戻す様にまた足早に歩き始める。

無心で歩いていた時は気が付かなかったが、足に力が入りにくくなっていた。

耳に感じる木々のさえずりが疲れを癒すようだ。

集中が切れて分かった。

さっきまで聞こえなかった音に自分が無理を重ねていた事を思い知らされる。

でも今は無理も無茶もしなければいけないのだ。

「大丈夫。」

自分自身を奮い立たせて気合いの息を吐いた。

風を感じる為に見上げた空は木々に遮られ少しずつしか姿を見せてくれない。

その時何か違和感を覚えて辺りを見回した。

いつのまにか薄暗くなっていた景色にシイラは少し不安を感じる。

この暗さは昼間が終わり夜が来る予兆だ。



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