花咲く原石
そこはかつて、小さな工房を兼ねた家があった場所だった。
決して立派とは言えないが生活するには十分な家、彼女が父親と共に暮らしていた家。
しかし今では見る影もない。
秘密基地のような家は崩され、その存在を全て消し去るように上から土が盛られている。
いや、少し違った。
家を作っていた岩や煉瓦は全て元の姿へと戻り、それが土となって盛られているのだ。
それが現在の姿だった。
家の残骸は何もない、全てダイドンが持っていってしまったのだとシイラは感じていた。
ダイドンの気持ちはよく分かっている。
彼がこうした理由も、こうしなければいけない理由もシイラはちゃんと理解していた。
だってシイラには彼の血が流れているから。
ダイドンの血も心も思いも全て自分の中に在るのだとシイラは感じていた。