花咲く原石
青年のまじまじと探るような視線に当たり前のように恐怖心が芽生えてきた。

そして青年は納得したように頷くと、不敵な笑みを浮かべて口を開いたのだ。

「お前、ドワーフだな?」

跳ねるような強い衝撃が胸を撃った。

表情に出さないように繕っても目の動揺は隠せない。

鼓動が早くなり、完全に混乱したシイラは青年から目を逸らせなかった。

図星とも見れる反応。

シイラの様子から確信に変わり、青年は勝ち誇ったように笑顔を見せる。

「当たりだな。」

歌うように流れる声に、シイラも睨むような目付きに変わる。

どうしよう、ここにオーハルはいない。

とりあえず逃げるか、でもダイドンの工具が入ったこの荷物を置いていくことは出来ない。

でも自分が捕まってしまったのなら意味がない。

ほんの数秒の間に頭の中はフル回転して自問自答を繰り返した。

どうする、いや、しかしが何度も生まれては消える。

とても寝起きとは思えない程に脳は活発に働いていた。




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