花咲く原石
凄く不思議な感覚に包まれている気がした。

前にどこかで会ったことがあるかのような気持ちにさえなってくる。

よく見ると彼の紫色の瞳は濁りも無く、とても綺麗な輝きをしている。

「俺はリト。この辺りはよく動き回ってるんだ。」

そう言うとリトは握手を求めてきた。

とても演じているようにも見えない。

それでも全てを信じきれなくて躊躇いから手を差し出せなかった。

「えっと…。」

半信半疑のまま、シイラはリトを目で探る。


その瞬間だった。


リトは一瞬にして冷たい表情になり、鋭い目付きで茂みの方を睨み付けた。

その姿にシイラは肩を揺らして驚いてしまう。

シイラの様子を感じたリトは左手を彼女の前に差し出して動かないように示した。

そして音を立てずに腰に備えてあった剣に右手を伸ばす。

リトが纏うピリピリとした空気がシイラにも伝わった。



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