花咲く原石
何かが来る、そう思うだけで身体が硬くなっていく。

「大丈夫だ、動くなよ?」

視線は茂みの方に向けられたままリトは呟いた。

それは自分に向けての言葉だと理解し、シイラは震えながら何とか首を縦に振った。


リトの態勢が少し前屈みになったと思った瞬間、


ザァンッ!!



茂みから何かが勢い良く飛び出た音と服が擦れる音、そして鈍い音と衝撃が背中に響いた。

おそらくリトが立ち上がったのだろう。

リトが生み出した風でシイラの髪が揺れたのを感じる。

でもそれは全て感じただけのもの。

目を硬く閉じて固まっているシイラには現状がよく分からない。

ただ自分を守る事に必死だった。

「…お前、何者だ?」

リトの声が低く響く。

「…っその子に…手を出すなっ!」

息切れ切れの声にシイラは目を開けた。



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