花咲く原石
彼はまだ仲間と話しているようだった。

特に声を潜めたり、隠語を使ったりしている様子もない。

堂々とした振る舞いに怪しく思わせるものはなかった。

しかしオーハルにはシイラが大丈夫だと断言できる気持ちが分からない。

エルフだからだと油断しているのではないか。

そもそも本当に彼はエルフなのか、騙されているのではないのか。

そうシイラに問いただそうとした時だった。

「それにオーハル、怪我してるから。」

「…っ!?」

言葉と共に傷の辺りをシイラに触れられて声にならない声が出た。

それは痛みからでは無かったが、シイラは痛みだと勘違いしたようだ。

「ごめん、痛かった?」

「…いえ、大丈夫です。」

思いの外焦りを見せてしまった自分に一番動揺していた。

まさか気付かれていたなんて、その驚きがオーハルの鼓動を速める。

しかし一番の動揺の原因は更に深い場所にあった。



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