花咲く原石
「大丈夫…私が感じる全てにダイドンがいる。」

還るとはそういうこと。

空から降る月明かりや星明かり、頬を撫でる風、全てに存在していくのだとダイドンは笑っていた。

それはとても大きな存在だけど、近くに感じるようで遠くにも思える。

だってそれはもう、ダイドンではないということだ。

でも。

「信じる。ダイドンだと感じていれば…いつか本物になるよね?」

疑えばそれは嘘になる。

だからシイラは無理矢理にでも信じることに決めたのだ。

気休めでもそれがいつか本物だと信じられる日が来る。

ダイドンがいない寂しさを癒すことにも繋がるだろう。

彼が言うように一番近くにダイドンがいてくれるなら、今まで通りシイラは明るく暮らしていくことが出来る筈だ。

今から始まることもきっとそう。

「もう泣かないって決めた。」

涙で震えていても声は力強い。

「…でも。」



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