花咲く原石
「わ…あー…。」

中に入るとせっかく塞がった口がまた全開になってしまった。

塀の中は小さな村のようだ。

所々に松明があり、その灯りの下でそれぞれが思い思いに過ごしている。

武器の手入れを行う人、何か交渉事を行っている人。

賑やかな通りをリトはどんどん進んでいく。

男性だけでない、意外と女性の姿も多く見られた。

「メインは上なんだ。荷物、引っ掛からないように気を付けて登ってこいよ?」

そう言うとリトは奥に入り込んだ場所にある階段を登り始めた。

次に梯子を上り、木と木の間に張り巡らされた板を渡ってさらに進んでいく。

確かに下から見れば無敵の要塞だが、中は意外と手造り感があった。

手摺の歪みや、継ぎ足された板が微笑ましい。

まさに手造り要塞、そう心の中で太鼓判を押して満足気にシイラは奥へと進んでいった。

「リト、おかえりなさい。」

「今日はいい獲物が獲れましたよ。」

「リト、準備は進んでいます。」



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