花咲く原石
シイラはその場にゆっくりと屈んで足元の土をそっと撫でてみた。

この景色を見てからずっとしていたことだ。

でもどれだけ触れても足りない。

「今はまだ…許してくれるでしょ?」

大粒の涙がこぼれる。

別れを告げられたとき、シイラは大泣きをしてダイドンを困らせてしまった。

でも、どうしようもない。

悲しくて寂しくて止まらなかったのだ。

命あるものに必ず訪れる別れだと諭されても涙が止まる筈がなかった。


ダイドンがいなくなる。

それがシイラにはどれだけ大きな出来事か、勿論ダイドンにも分かっていた。

しかしこれ以上泣き続けるとダイドンを悲しませてしまうから、シイラは約束したのだ。


もう泣かないと。





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