【短】彼女の憂鬱


急に、フワリと暖かい感触に包まれる



流れていた涙もピタリと止まる



だって……


春兄に抱きしめられてる……!




「本当……勘弁して」



はぁ、と頭上でため息が聞こえて、また怒ったのかと思ったけど


予想とは裏腹に、さらに強く抱きしめられる




「は……春兄……?」



苦しいよ、


そう言おうとしたら、春兄の腕が緩くなり、顔を覗き込まれ




「ん、泣き止んだ」




またいつもみたいに、優しく笑ってくれたから



また、涙ぐんできた




「は!?なんでまた泣く!?」


「春兄ぃー……」




そうだ、そういえばあの時もそうだった



高1の終わりに、逆ギレ告白をした時



そのころ春兄は、なんだか私のことを避けだしてて



何で避けるのって、春兄に聞くと



お前こそ何で俺に近づくんだよって、冷たく言われて



それが悲しくて、なんだか腹が立って、


……逆ギレ告白して、泣いちゃって



そしたら春兄が、同じように抱きしめてくれた



『ごめんな……俺も好き』



そんな言葉を一緒に言われたから



泣くどころじゃなく真っ赤になったの
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