お医者さん嫌いなのに・・・
診察室に入ってもらおうとしたけれど、怖くって動けなくなっちゃってた。
名前を確認したら、井上あゆみ、16歳となってた。
慶太に、病院が怖くって診察室に入れないみたいって伝えたら、看護師の愛さんと一緒に出て来て
「あゆみちゃんだね。診察室が怖かったらここでもいいよ。今日は先生とお話ししよう。」
俯いて、涙を流しながら、頷いてた。
「お熱が高いね。頭痛いとかある?」
「うん」
「そっか、辛いね。お薬は飲めるかな?」
「うん、ごほっ」
「じゃ、お熱が下がるようにお薬を出そうね。咳はどれくらい出るかぁ?咳き込む感じかな?それとも、時々でる感じかな?」
「うん、ごほっ。寝たら咳き込む感じ。ごほっ」
「喘息とか気管支炎とか言われたことはありますか?」って慶太がお母さんの方をみた。
「あ、はい、幼児の頃に何度か。」
「そうですか。今の咳してる感じから、どっちかなって思って。あゆみちゃん、咳した時に、胸が痛い?」
「ううん。痛くないです。」
「痛くないなら、肺炎は大丈夫かな?息が苦しい感じはあるかな?」
「うん。ごほっ、ごほっ」
「そっか、ちょっと苦しそうだね。聴診器で呼吸の音だけ聞かせてくれないかな?痛くないよ。この聴診器で気管支の音を聞いたら、咳の様子とかどんな薬がいいかわかるから。頑張れないかな?ブラウスのボタンを2つだけ外してもらえばできるから。」
「うん。」涙がボロボロって溢れてきたけど、返事をしてくれた。
じゃ、このまま、座っててね。って看護師の愛さんがボタンを2つ外して、慶太がそっと聴診器を当てた。
「息止めないで、スーハーってしてごらん。そうだよ。できてるよ。。。よし、いいよ、頑張ったね。」
「咳がでるのは、気管支の空気の通り道が狭くなっているのが原因。だから、お薬で気管支を少し広げてあげたら、咳はだんだん治ってくるからね。」
「うん」
「じゃ、今日は、お熱の薬と気管支の薬を出すから、しっかり飲んでね。それで、できたら、また来て欲しい。今回の熱と咳が風邪ひいちゃったせいでたまたま出てるのなら大丈夫だけど、喘息だったら、ちゃんと治療しないといけないからね。薬は5日分出すから、様子見てもらいながら、薬があまり効かないとか、別の症状が出て来たとか、あったら早めに来てください。5日分薬を飲みきって良くなっていると感じてももう一度来てね。」

お母さんから「ありがとうございました。こんなに優しくしていただいて、もうどうしようかと思ってました。」と言われた。
慶太は、「病院が苦手な子とか医者が嫌いな子は多いですよ。大人にも。大丈夫ですよ。今日はちゃんとお返事もしてくれたし、呼吸の音も聞かせてくれたし、お母さんも安心してください。じゃ、また待ってるからね。」
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