嘘つきな君からのキス
手に
――
安静に家で寝てれば良かったんだ。
朦朧とする意識の中で落胆する。
私は生まれつきの発熱体質だ。ちょっとしたことで、すぐに熱が出て寝込んでしまう。
自分の事は自分がよく知っている筈なのに、どうして朝からだるかった体で学校に来たのか。愚か者と言う他ない。
熱が出るのは当然だ。
上手く焦点が定まらない目を閉じても勝手に目が開き、まるで眠れない。
保健室なんて落ち着ける筈が無いんだから、最初から家で寝てなよ私。
自分で自分に呆れを持ってしまえばどうしようもなかった。
静寂に包まれながら、今教室で行われているであろう数学の授業風景を浮かべる。前回も出れなかったからどんどん遅れていく。
このままで大丈夫かなぁ……
心配した所で何かが変わるわけでもなく、せめて早く体を直そうと今度こそ固く目を瞑った。
< 1 / 161 >