嘘つきな君からのキス
目をごしごしと擦り、いっぱいいっぱいのこの気持ちを朱に話してしまおうとした。
無理矢理でもいいから冷静になれと言い聞かせる。
そして、
「朱、あのね……」
「逢坂、何でまた泣いてんの」
「!!」
冷静など一瞬で吹っ飛んだ。何で昨日の今日で彼は話掛けてくるのか。
いいや、どうして話掛けてこれるのか。が正しい。
やっぱり三神君の事は私には理解できないらしい。
「っ……」
口を動かし、声を出そうとして止める。
今私が何を言ったって惨めになるだけだ。
「んんーー。何があったか分かんないけど、三神君。あっちいって」
何かを察したのか、朱が珍しく人に対してそんな言葉を使う。どちらかと言えば人懐っこくて誰とでも仲良く出来る朱が。だ。
ビックリしてしまった私とは裏腹に、三神君は朱の言葉を無視して言った。
「逢坂、ちょっと話しようか」
「やっ……!」
私の手を取ろうとして、だけど触れるよりも早く拒絶したのは私だった。