嘘つきな君からのキス


悲しみを超えて怒りすら湧き上がってくる。

それをどんな言葉で表せばいいというのか。グルグルと頭が回る。


「俺……」


三神君がまた言葉を発しようとしたとき、違う声が聞こえてきた。


「れーちゃんとゆずるん発見!っと」


場にそぐわない明るい声。誰かなんて顔を見なくてもわかる。


「ふー。今逢坂と話してるからあっちいって」


朱が三神君に言ったように、今度は三神君が鳴瀬君にそう言う。

けれど、そうそう言う事を聞かないのも同じ。


「ふふん。そう言う訳にはいかないんだなこれが。れーちゃんを捕まえてっていうのが朱さんからの指令だからねー。ってわけで、れーちゃん」


ギュウッと制服を握っていた私の手を鳴瀬君は取り、歩き出した。

分からないままに、私もつられて歩き出していた。

なのに。


「ふー。もっかい言うけど、逢坂と話してるからあっちいって」


また引き止めに来る。




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