嘘つきな君からのキス


この時、私は初めて鳴瀬君の顔を見た。

いつもニコニコしていたそれとは少し違う。怒っていると言う表現も違う。冷静、と言う方が一番近いかもしれない。


「三神、わかんない?れーちゃん困ってんの。事情は知らないけど、何となくわかるよ。――大嘘吐き」


そう吐き捨てるように言えば、三神君は何も言わなくなった。追って来ようともしなかった。


そんな中で、私は思いだしていた。


“大嘘吐き”とたった今言った言葉、それは前にも聞いたことがある。いつだったか、私の問いに鳴瀬君が答えたのだ。


「嘘も嘘。大嘘つき」


と、それとこれとは関係あるのだろうか。

聞きたい。けれどそれよりも……


「さて、三神も追ってこないし、この辺で休憩しよっか」


体力が限界だ。




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