嘘つきな君からのキス


音が静かだから、今は授業中なのかもしれない。

その分三神くんの声に集中できる。してしまう。


「あの日、触れてみたら、逢坂が熱くてさ」


反対に、三神くんはとても冷たい手の人だった。


「それが心地よくてさ。何となく離れたくないなって思った」


だから、あんな風に言ったのか。


「俺、昔真冬の池に落ちたことがあってさ、その日からずっと体が冷たいんだ」


今も冷たいな。と、微かに触れる肌から感じる。


「その日からよく落ちた夢を見て、寝れなくて、寒くて。でも不思議なんだ。逢坂がいるとそんなこともなくて」


利用価値のある人間だとでもいうのだろう。


「最初はそれで、無理矢理でもなんでも付き合う形とってればいいかなって思ってた」


酷い人。だけど、心底憎んでしまえないのは、


「でも変なんだ。いつからか、逢坂と……」

「すすすすすすす、ストップ!」


そこからは耐えかねて思わず制止を掛けた。が、もう遅い。

聞こえてしまった。


「キスしたいなって思うようになった」


そんな、恥ずかしい言葉。


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