嘘つきな君からのキス
聞こえた声が何倍にも大きくなって、体の芯が熱くなった。
「逢坂に好きだって言われて嬉しかった」
やだやだ。やめて。
「だから、嘘ついてて悪いなって思った」
言わないで。
「でも、ふーと一緒にいるところ見るのも嫌。誰かに邪魔されるのも嫌。逢坂に嫌われるのも嫌。俺と一緒にいてくれなきゃ嫌」
そんな曖昧で、自分で好きじゃないと言っておきながら、私を独占するような言葉。
何となく、多分、きっと私は気づいた。
嘘つきの真意。
だったら私は嘘なんて吐かない。
彼の嘘に振り回されるだけ。
「三神くん」
名前を呼ぶ声は掠れる。伸ばした手は震える。作ろうとした笑みは引きつっただろう。
「逢坂?なに……」
それでも私は、嘘を飲み込んだ。
自分から触れるのと、人から触れられるのでは感覚はまた違うと初めて知った。
数秒にも満たないそれは幼稚なもので、それでも私にとっては精一杯の行動だ。
「……そんなんじゃ足りない」
「へ……?」
「もっと」
「!?」
けれど、もしかするとそれは逆効果だったのだろうか。