嘘つきな君からのキス


どれくらい経ったか。

眠りが浅かったらしく、すぐ近くで聞こえたカタン……と鳴った音で意識が戻った。


瞼を薄く開け、右側の窓の方に首だけを向けると、カーテンを開いて右足を窓の縁に掛けたまま固まる姿が目に映る。

黒くサラリとした髪。捲られたシャツから覗くのは驚くくらい華奢な腕で、全体も皮と骨しか無いんじゃないかと思うくらい。

数回瞬きを繰り返した後、その相手が同じクラスの人物である事に気付いた。


三神くん。三神譲(みかみゆずる)くん


確か彼も此処の常連だと聞いたことがある気がする。実際に合ったことないけれど。


「……逢坂(おうさか)?」


相手も気付いたようでいぶかしげな表情を浮かべてようやく全身を窓の縁に上げた。

揺れるカーテンがいっそう強く靡く。


「そこ、俺の特等席なんだけど」


保健室のベッドに特等席もないだろう。が、でも常連ならあるのか。私は無いけど。





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