嘘つきな君からのキス


あわてて、視線だけ辺りに彷徨わせて確認すると、幸い休み時間のざわめきで、誰一人として聞き取ってはいないようだった。

残るは……


「髪、暖かい。良いねこの席。暖かくて」


屈託なく笑いながら私の頭の上で動く手だけだ。

嫌ではないし、払いのけるなんてするほどでもないけれど、二つの意味でくすぐったいのだ。


「あ、の…………み、三神くんの席何処になったの?」


なのにせめてもの制止の言葉すら上手く出てこない私。ほとほと嫌気が差してくる。

もはやこの状態で何処まで耐えられるかが勝負だった。


「廊下側の真ん中」

「へ、へぇ……」

「あの席寒いよ」

「さむっ……!?」


こんな状態でも聞き逃しはできない言葉。

冷静になってみればおかしいのに気付く。髪からとは言え、頭皮に伝わるのは冷たい感覚。きっとその手は……




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