嘘つきな君からのキス
そうしながら、飛んできたであろう窓の方に顔を向けると打ち終わった後のモーションのまま停止した三神くんがいた。
今のボールを三神くんが打ったものだとすれば、まるで逆方向だ。
何故なら、彼は此方に背を向けているのだから。つまりバッターボックスは此方側。
三神くんはゆっくりとバットを下げ、振り返る。合うのは……
「っ――」
……冷たい、目。
「……もしかしてそっちに当たった?」
と思ったのは気のせいで、のほほんと問い掛けて来たのが聞こえた。
驚きの余りか今の今まで机に伏せていた鳴瀬くんが顔を上げて、窓から飛び出しそうな勢いで身を乗り出した。
「ゆずるんマジあぶねーからぁ!」
鳴瀬くんが叫びをあげると三神くんは早足気味に此方にやってきた。