嘘つきな君からのキス
火事場の馬鹿力とでも言うのか、普段はそこまで力が出ない癖に今回に限って三神くんを床に落としてしまうまでの力を発揮した。
落としてしまった事は謝らないとならないと言うのに私はと言えば壁に背を預けて布団を盾に縮こまるばかり。
噛まれたのかはちゃんと分からないけど確かに歯が触れて、それが変で変でおかしくて、まだ鼻がヒリヒリとして、それは痛みじゃなくて熱で。
「いっ……」
もはや半泣きになりかけていると後頭部を押さえながら三神くんは起き上がった。相当痛いのか苦痛に顔を歪めている。
「ぁ、こ!氷!冷やさないと!」
どれが何処の感情で、どれが言うべき言葉なのか分からないひっくり返った脳内からの唯一の行動。
自分か一筋落ちた涙は何なのか知らぬままに立ち上がり氷を取りに行こうとした。
「いらない。無くても平気」
止めたのは氷にも似た手のひら。