私の彼氏になってください





そんな表情をしてしまった私の横顔に気付いてしまったのか、倉本はまた大きなため息をついて「やれやれ」というような仕方ない感じの顔になった。






「俺も勉強頑張ってるつもりだったから、あんなに簡単に俺のレベル超えてるヤツが近くにいたらライバルとして見てしまうだけ。今はただ…それだけだな」



「勉強のライバル…?」






…そっか。



だから倉本は塾に通ってたんだ。





柚の勉強のレベルに近付くために。





本気で…勉強を頑張ってたんだね。





私なんかとは違うなぁ〜、やっぱり。





ケータイが欲しいとか、倉本に少しでも近付けたらとか、そんな打算でしか動けない私なんかとは。








「ライバルだったらムカついても当然だろ?」



「うん、まー…確かに。でもそれなら、ムカつくから好きになって、振られて好きじゃなくなったらムカつくしか残らないってコト?」



「ムカつくしか残らないことはないけど…、実力は認めてるつもりだけど。杉田の」



「ふーん…」



「馬場には難しいか。まっ、お前にもそのうち分かる時が来るんじゃねーの?」



「何ソレ?またヒトのコトバカにして……」






でも悔しーけど、倉本の言ってることがやっぱりよく分からない。





なんか、既に何かを悟ってるような倉本の表情がまた嫌味に見える。





私が体験したことのない感情を、倉本はきっともう感じてしまったんだろうな…。







すると倉本が急にスクっと立ち上がった。






「…ドコ行くの?また逃げる気?」



「バーカ。コーヒー一杯で喜んでたんじゃなかったのかよ?」



「え?あ…、コーヒー???」






おっと。



すっかり忘れるところだった。





珍しく倉本が私の誘いに乗ってくれたのに。







私は歩き始めた倉本の背中を追って、慌てて立ち上がって早足で下り階段の方向に向かった。













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