私の彼氏になってください
けっこーさっさと帰る準備をしたつもりだったのに、教室を出るともう柚達の姿は見えなくなっていた。
一応隣の教室ものぞいてみるけど、やっぱり柚と映美佳の姿はない。
…とりあえず靴箱行ってみよっかな。
それで二人がいなかったら一人で帰るかぁ。
……なんて思っていたら、急に「馬場?」と、私を呼ぶ男子の声が聞こえてきた。
その声の方向を見ると、何とそこには補助カバンをリュックみたいにして背負い、片手にはケータイを持った倉本の姿があった。
「あれ?倉本…?まだいたんだ?」
「いたら悪いのかよ?」
「いや…、いっつもさっさと教室を後にするじゃん?」
「いつもは塾があるからな。今日塾はいつも通り夕方からだし、ちょっとダチとのんびりしてただけ」
「そーなんだ」
「杉田ならとっくに出て行ったけど」
「え?誰が柚に用事って言った?」
「は?」
私も最近倉本対策がバッチリできるようになってきたかも。
とっさにこんな切り返しができるようになるなんて、自分でもビックリだよ〜。
倉本が少し焦った顔をしたのを、私は見逃さなかった。
「倉本、一人ならさぁー、私と一緒に帰ろーよ」
「はぁ?方向逆だろ?」
「別にいーじゃん。送ってほしいなんて言ってないよ。私が倉本について行くだけ」
「なんだ、それ」
「私がそーしたいの。…ダメ?」
「……別に断る理由もないけど」
…やったっ!
倉本と一緒に下校できる!!
倉本は「ウザいオーラ」が出てるような気もしてたけど、最近は少しそれが薄らいだかな…?
文化祭で映美佳とあゆに励まされて以来、今まで以上にしつこく倉本に接してきたからね、そろそろ気付いてもらわなきゃ、私の気持ちに。