私の彼氏になってください





何秒経ったんだろう?





すごく長く感じた時間の後、まだ頭を下げたままの私の視界が少しだけ暗くなった。





そう、倉本が私に近付いて来たんだ。






「まあ…、頭上げろって。てか、こーゆーのってお願いするもんなの?」



「え?」






私がゆっくりと頭を上げると、倉本の静かな笑みが見えた。





ウザいオーラが出てない…???






「馬場の気持ちには薄々気付いてたよ。まあ…ホントに俺で良かったらいーんじゃね?」



「え?それって……」



「馬場と付き合う。彼氏になる。…それでいーんだろ?」



「まっ、マジでいーの?」



「嫌なら別にいいけど」



「嫌じゃない!むしろ嬉しい!!やった…!勇気出した甲斐があった〜」



「なんだ、それ。…じゃあ、帰るか」






そう言って、倉本は手袋がはめられた私の右手をそっと掴んだ。





そしてさっきとは逆方向に歩を進め始めた。






「え?ちょっと…、そっちは倉本の家じゃないんじゃ…?」



「馬場の家まで送る。付き合うって…そういうことなんだろ?」



「いーの?私の家…そこそこ遠いよ?」



「ついでに馬場の家どこか知りたいし」






ああ〜、何で私、手袋はめちゃったんだろ?





どーせ手をつなぐなら、絶対素手が良かったんだけど。





でも…、倉本の温かさ、手袋を通じて伝わってくるよ。





今までの素っ気ない感じとか、全部飛んで行ったような倉本の温かさが…。





< 27 / 39 >

この作品をシェア

pagetop