私の彼氏になってください
「なあ、付き合うんだったら名字同士で呼ぶのとか止めないか?せめて二人の時ぐらいはさ」
「あ、そーだね。つい癖で『倉本』って呼んじゃったよ」
「あかね……」
不意にそう呼ばれて、ドキッとした。
こうやって父親以外の男の人から下の名前を呼び捨てで呼ばれるなんて…、今までなかったから。
真剣な倉本の瞳に、私の顔が映り込んでるのが見える。
ドキドキ……
ドキドキ……
こんなに心臓が動いてるのを意識するの、初めてだよ。
すると、その倉本の瞳がどんどん私の顔に近付いてきた。
近付いて、近付いて…
唇に温かくて柔らかな感触。
私…、キスされた?
唇の感触が離れて少し距離が開くと、そこにはさらに真剣な表情をした倉本の顔が近くにあった。
「あかねも呼んで、俺のコト」
「雅樹……」
ずっと夢に見ていた。
こうなることを。
だけどこれが現実に起こっていることなんて…
やっぱり信じられない。
まだ夢の続きにいるんじゃないかと思ってしまう。