私の彼氏になってください
「また俺の顔見て笑ってんのかよ?」
「いーじゃん。いつまでも見てたいの♪」
「まあ俺も……」
…と、雅樹が私の顔をチラリと見てくる。
そして指で私のほっぺに触れてきて、そのまままた深いキス。
だけどいつもよりは少し短めに切り上げて、雅樹は塾に行く準備をし始めた。
「塾までになるけど…、送ってく」
「ありがとー。私も帰る準備するね」
「寒いから暖かくしろよ」
「雅樹がいるからあったかいもーん」
「ホントあかねって…かわいいよな」
こうやって私に密着しながらコートを着せてくれたり、白い手袋をはめてくれたり…。
「あかね、あかね」って、甘い声で呼んでくれる度、私もとろけちゃいそうなんだよね。
外はとっても寒いけど、雅樹といれば心がホカホカあったまってくる。
白い手袋を一つ取って、指を絡めて手をつなぐ。
雅樹の体温を感じて──
私の体温も雅樹に伝わっているといいな。
「ここまでだな。あー、塾だりいけど頑張ってくる」
「うん!応援してるから勉強頑張ってね」
絡まった指が一つ一つほどけて、私は外していた白い手袋を付ける。
そして…、塾の建物に入っていく雅樹の背中を見送るんだ。
私は──、この人の彼女。
大好きな、大好きな雅樹の彼女。
塾に足しげく通って勉強を頑張る雅樹もとっても好きなんだけど…
幸せの真っ只中にいる私はまだ気付いてなかったんだ。
その裏側にあった雅樹の苦労とか、ストレスとか…。
私がそれに気付くのは、まだまだ先の話。
今はただ、雅樹と一緒にいられる時間がいとしくて、いとおしくてたまらなかったんだ。
*fin*