SugarⅢ
「ごめん、待った?」
申し訳なさそうな顔で謝る有明君。
確かに、呼び出してた時間はとっくに過ぎてる。でも、理由は聞かなくても分かってるから聞かない。
絶対、女の子に引き留められてたんだよ。バレンタインだもん。仕方ないよね。
「大丈夫、さっきまで友達といたから」
チョコが入った箱を、ギュッと握りしめた。
「そっか、よかった」
有明君はそう言って微笑むと、もう何も言わなかった。
まるで、あたしから話を始めるのを待っているかのように。
静かな教室内が、あたしの心拍数を上げる。心臓の音、有明君に聞こえるんじゃない?
「あ、あの…!」
「うん」
勇気を振り絞って、「好きです、付き合ってください」そう言うだけなんだから。
句読点含んでも、たったの14文字じゃない。
頑張れ、あたし!
「有明君っ」
「はい」
息を吸って、気持ちを落ち着かせて……行けっ、あたし!