片思い経由、恋愛行き
「あ、やべ、俺もう行くわ。
邪魔して悪かったな、またな」
ふと時計を見てそう言った達也は、とっとと店に走って行ってしまった。
…あっけない…
…ってそんなことよりも成海さんだ。
一点を見つめる彼女の表情は、さっきまでの笑顔なんてこれっぽちもない。
「成海さん大丈夫?どうかした…?」
「あ…ううん、何でもないよ」
俺の質問にそう答える彼女は、やっぱりどこか上の空。
その理由は、だいたい予想がつく。
恋愛初心者の俺でもなんとなく感じるこの違和感。
きっと俺の思い過ごしなんかじゃないはず。
胸がきゅっと締まる。
…こんな成海さん、見たくない…
「成海さん…ちょっと早いけど、今日はもう帰ろうか」
どうしようもなくて、気付けばそう口にしていた。