片思い経由、恋愛行き


「…達也のことが好きなんでしょ」



柔らかいトーンで言った。



「…っ…!」



成海さんはまた動揺しだす。



…分かりやすい子だ…




「毎朝成海さんが見つめているのって、達也だったんだ」


「え…何で知って…!?」


「毎朝一緒にいるんだもん、分かるよ。…まさかそれが達也だとは気付かなかったけど」


「……」



俺が知らないとでも思っていたのか。




「見つめるだけの恋って、辛いよね」


「……」



名前も正体も知らないで、ただ見ているだけの人。



近づけることさえも奇跡だと思えるくらいの、どうにもならない恋。



…決していい恋だとは言えない。



「俺もずっとそうだったんだ」


「……え?」



俺の言葉に疑問をもったのか、成海さんが少しだけこっちに顔を向けた。




「瑞樹くんも…ずっと見てるだけ?」


「うん。…あ、今はやっと友達になれたってところだけど」



そう言ってふふっと笑ってやる。
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