片思い経由、恋愛行き


ブレーキの揺れを感じてすぐ、前の入口の扉が開いた。



一緒に待っていたおばあさんの後に続いて、彼女が車内に足を踏み入れる。



奥に向かって歩いてくる彼女を見つめていると、一瞬だけ目が合った。



その瞬間、俺の頭の中が真っ白に。



目が合うなんて、予想もしなかった状況だ。



…ま、まさか…

まさか彼女も、多少なりとも俺のことを意識して……




…るわけないよな。



どうせちょうどいい席を探すときに偶然合っただけだ。



そんなもんだよ。





…なんて考えていると、彼女は後ろの段を上って俺のすぐ近くで止まり、通路を挟んで俺の左隣の席に座った。
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